ヒザが痛い~変形性膝関節症について①
ヒザが痛い~変形性膝関節症かもしれません
「最近、階段を歩くのが痛くておっくうでのう…」「正座ができんくなってきた」
などなど、ヒザに痛みや違和感を覚える方は中高年を中心に非常に多くいらっしゃいます。 加齢とともに現れるそれらの症状で、最も頻度が高いのは「変形性膝関節症」です。厚生労働省では、国内での「変形性膝関節症」患者数を、自覚症状を有する患者数で約1,000万人、潜在的な患者数 (X線診断による患者数)で約3,000万人と推定しています。また50歳以降の男女比では、女性の方が男性よりも2倍ほど多く、60歳以上の女性に至っては60%~80%の方が発症している、非常にありふれた疾患です。
ヒザで何が起こっている?
外傷(半月板損傷など)や遺伝的素因、炎症性疾患(関節リウマチなど)等に因ることもありますが、多くは加齢による退行性変化=軟骨の質の低下、ヒザを支える筋力の低下に因ります。これにより
・軟骨への負担が増大し、修復能力を上回って軟骨が少しずつすり減っていくと徐々に変形していくほか、関節への負担が増加して関節に炎症が起こることがあります。この頃から、曲げ伸ばしした時などに痛みを感じることがあります。
・軟骨の質の低下=水分や弾力が失われ、ヒザが曲げ辛くなります。
・負担が強くなった関節を守ろうと、滑液(潤滑油のようなもの)が必要以上に分泌され、いわゆる「ヒザに水がたまる」状態(関節水腫といいます)になります。
・さらに軟骨のすり減りが進むと、軟骨が無くなってきて骨同士がこすれ合うようになります。この頃には痛みが更に強くなり正座するのも難しくなってきます。
・骨同士のこすれ合いが進むと、骨そのものが変形し始め、痛みが安静時にも出てくるなど、日常生活にも支障を来すようになってきます。
放っておくと悪くなるだけ
「変形性膝関節症」は、ゆっくりと進行していく病気です。「年とったけん、しょうがないよね~」と放置している方や、痛み止めを使うなどでしのいでいる方が非常に多くいらっしゃいます。
ちなみに「膝痛に効く!コンドロイチン!」等々、テレビCMや折り込みチラシで、コンドロイチンやグルコサミン、コラーゲンなどの錠剤・サプリがヒザの機能回復に役立つ!と銘打った広告を良く目にしますが、そのような効果は科学的・医学的には一切認められていません。そもそも一度すり減った軟骨や骨が元の状態に回復することは絶対に無く、それらを飲んでも病気はジワジワと進行していくのみです。
進行してからでは日常生活への影響がそれだけ大きくなるほか、運動能力の低下→転倒による骨折→寝たきりや要介護の状態に→認知症が一気に進む、といったリスクも大きくなるため、できるだけ早期から治療を始め、症状の進行を抑えることが大切です。
階段をのぼる・おりる、立つ・座る、歩く、などの動作時の痛みや違和感が受診のサインです。
長くなってきましたので、今回はここまで。
次回、「変形性膝関節症」の治療等について紹介します。
監修:整形外科 寺井祐司